NIPT

NIPTとは?妊婦さんが知っておきたい検査の基礎知識

妊娠が分かった喜びとともに「おなかの赤ちゃんは健康に育っているのかな」と不安になる妊婦さんも多く、高齢出産を控える方は特に不安を感じやすいでしょう。

そこで近年、出生前診断の一つとして新型出生前検査のNIPTが注目されています。NIPT」という言葉を耳にしたことはあっても、どのような検査なのか、どんな情報が得られるのかなど、気になっている方も多いのではないでしょうか?

この記事では、NIPTについて、NIPTの特徴や対象者、NIPTを受けられる施設、病院選びのポイントなどを詳しく解説します。あわせてNIPTと従来から実施されている出生前検査との違いも説明していますので、NIPTを検討されている方は、ぜひ参考にしてください。

NIPTとは?

NIPTとは、Non-Invasive Prenatal Testing(非侵襲的出生前遺伝学的検査)の略で、2010年にアメリカで開発された新しい検査で、新型出生前検査ともいわれています。

日本では、2013年から日本産科婦人科学会の指針のもと、日本医学会の認定制度による認定施設で検査されています。

NIPTは、妊婦さんの血液(血漿中)にある胎児由来のDNAの断片を分析して、おなかの赤ちゃんの染色体の数的異常をスクリーニングする遺伝学的検査です。

NIPT検査の結果は、通常「陰性」または「陽性」として報告されますが、結果が確定しない「判定保留」となる場合もあります。「判定保留」は、胎児由来のDNA不足や妊婦さんの疾患によるものなど要因はさまざまですが、結果が判定できないというものです。判定保留と結果が出た場合は、再検査や確定検査を行う場合があります。

「血液検査で赤ちゃんの病気が分かる」と安易に思ってしまう方もいますが、NIPTは非確定的検査です。NIPTの結果が陽性の場合は、確定的検査(羊水検査や絨毛検査など)を受け、赤ちゃんの状態を確認する必要があります。

NIPT3つの特徴

NIPTの特徴は、主に以下の3つです。

低リスク

採血で行うため、おなかに針を刺す必要がなく、妊婦さんや赤ちゃんへの身体的なリスクが低い

高精度

NIPTでダウン症が陽性と出た人の的中率は97.3%で、その内の偽陽性は2.7%
精度が高い検査ですが、偽陽性もあるため羊水検査などの確定的検査が必要

早期診断

妊娠初期の9~10週から検査できるため、早期に赤ちゃんの状態を知ることができる
異常が見つかった場合には、出生前や出生後早期の治療や事前の療養準備が可能

NIPTは安全性や精度が高い検査ですが、赤ちゃんの染色体異常を確定する診断ではありません。

あくまでも可能性を示すスクリーニング検査であり、結果は医師と相談し総合的な判断が必要です。

参照:公益社団法人日本産科婦人科学会倫理委員会 母体血を用いた出生前遺伝学的検査(NIPT)に関する指針

参照:厚生労働省 NIPT 等の出生前検査に関する専門委員会報告書

NIPTの対象となる方

NIPTの対象となる可能性があるのは、主に以下の5つのケースです。

・胎児超音波検査で、赤ちゃんに染色体異数性の可能性が示唆された方

・母体血清マーカー検査や超音波検査で、赤ちゃんに染色体異数性の可能性が疑われた方

・過去に染色体異数性を持つ赤ちゃんを妊娠・分娩したことがある方

・高年齢の妊婦※

・両親のいずれかに均衡型ロバートソン転座(染色体の総数が45本で通常より1本少ない)があり、赤ちゃんが13トリソミー、21トリソミーになる可能性が示唆される方

※これまで、出産予定日時点で35歳以上の高齢出産となる方と定められていました。2022年から年齢制限は撤廃され、現在は、希望する方は年齢を問わず1つの選択肢として受検できます。

NIPTを検討する場合は、どのような検査か正しく理解するために、夫婦で遺伝カウンセリングを受けることが大切です。

参照:日本医学会 出生前検査認証制度等運営委員会 NIPT 等の出生前検査に関する情報提供及び施設(医療機関・検査分析機関)認証の指針

NIPTが検査できる時期

NIPTは、妊娠9~10週頃以降から任意で行うことができます。

NIPTは、妊婦さんの血液中に含まれる少量の胎児由来のDNA(cell-free DNA)を分析して検査を行います。

胎児由来のDNAは妊娠6週目頃から増え始めますが、検査に必要な量が十分に増えるのは9~10週目頃とされています。あまりに早く検査を受けると、十分な量の胎児由来DNAが得られず、判定保留や再検査となるケースもあります。

NIPTを検討している方は、スムーズに検査を受けられるように、医師と相談して事前に予約をしておくことが大切です。

NIPTで分かる赤ちゃんの染色体異常

国内のNIPT認定施設で行われているNIPTの対象となる疾患は、以下3つのトリソミー症候群で、数ある染色体疾患の約7割を占めています。

・13トリソミー症候群(パトウ症候群)

・18トリソミー症候群(エドワーズ症候群)

・ダウン症候群(21トリソミー)

NIPT認定施設では、上記3つの疾患のリスク評価のみで、その他の先天性疾患を調べることはできません。しかし、認定を受けていない無認定施設では3つのトリソミー症候群だけでなく、さまざまな先天性疾患を検査することができる施設もあります。

詳しくは、「NIPTはどこで受けられるの?」で後述します。

NIPT(新型出生前診断)と出生前検査の違い

NIPT(新型出生前診断)と出生前検査はどちらの検査もおなかの赤ちゃんの染色体異常を調べますが、以下のような違いがあります。

NIPT

妊婦さんの採血のみで検査する非侵襲的出生前診断で、身体的なリスクは低いとされ、9~10週頃から検査可能です。

染色体異数性のリスクを「高い」「低い」の確率で示すスクリーニング検査なので、陽性が出た場合は確定診断が必要です。

認定機関や登録機関で行われているNIPTは、13トリソミー・18トリソミー・ダウン症候群の3つのトリソミーが検査の対象です。

出生前検査(羊水検査や絨毛検査など)

従来から行われている出生前検査には、羊水検査や絨毛検査などがあります。

羊水検査は妊娠 15 週以降、絨毛検査は妊娠 11~14 週に子宮内穿刺を行い、胎児の染色体数的異常、染色体構造など染色体疾患全般を検査する確定検査です。NIPTよりも確定的で検査の対象となる疾患は幅広いですが、流産のリスクも伴います。

このようにNIPTと出生前検査は、どちらも胎児の染色体異常を調べる検査ですが、検査方法やリスク、精度、検査時期、検査結果などに違いがあります。

検査を検討している方は、それぞれの違いを理解し、また医師としっかり相談をして受けるようにしましょう。

NIPTはどこで受けられるの?

NIPT認定施設

NIPT認定施設は、臨床遺伝専門医など遺伝診療に関する経験豊富な専門家が在籍し、安心して検査を受けられるよう十分な時間をかけた遺伝カウンセリングを実施されています。

2024年10月1日時点で、基幹施設 177施設・連携施設 385施設の合計 562の認定施設があります。

検査前から検査後、出産まで妊婦さんの不安に寄り添い、サポートする体制がとられています。

参照:こども家庭庁 妊娠中の検査に関する情報サイト

参照:認証医療機関(基幹施設・連携施設)⼀覧

NIPTを実施するNIPT認定施設(医療機関)には、大きく分けて以下の基幹施設」と「連携施設」の2つあります。

基幹施設

NIPTの実施から検査後の対応、陽性結果が出た場合の精密検査やその後のサポートなど全て基幹施設内で対応できます。連携施設で対応が困難な場合は、基幹施設がサポートします。

参照:公益社団法人日本産科婦人科学会倫理委員会 母体血を用いた出生前遺伝学的検査(NIPT)に関する指針

連携施設

NIPTの実施にあたり、基幹施設と密接に連携している施設です。連携施設では、NIPTの検査自体は行うものの、専門的な遺伝カウンセリングや、陽性結果が出た場合の対応については、基幹施設の支援を受けながら行います。

参照:公益社団法人日本産科婦人科学会倫理委員会 母体血を用いた出生前遺伝学的検査(NIPT)に関する指針 

NIPT無認可(認可外)施設

NIPTは、日本医学会の認定を受けていないNIPT無認可(認可外)施設でも実施されています。

認可は受けていないものの、医療機関においてNIPTに精通した医師の診察のもとで適切に実施されているので違法な機関ではありません。

NIPTの対象となる方の条件の自由度や検査項目の幅広さ、NIPT認定施設の数が需要に追いついていないためにNIPT無認可(認可外)施設を選ばれている方も多い傾向です。

しかし、NIPT無認可(認可外)施設の中には、

・NIPTの十分な知識や経験を持たない医師が診察

・陰性以外の結果の場合に適切なフォローがなかった

・妊婦さんへの適切な情報提供や遺伝カウンセリングを実施せずに他の医療機関へ受診をするよう促す

などの施設もあるとされています。

NIPT無認可(認可外)施設で検査を受ける場合は、実績や検査後のサポート体制などご自身の状況に合わせて適切な施設を選ぶことが大切です。

NIPTの流れ

ここでは、認定施設と無認可(認可外)施設のNIPTの流れについてみていきましょう。

NIPT認定施設(基幹施設)でのNIPTの流れ

NIPT(新型出生前診断)の認定施設(基幹施設)である国立研究開発法人 国立循環器病研究センターのNIPTの流れは以下のとおりです。

・検査前遺伝カウンセリング予約(パートナーと一緒に来院)

・検査を受けることに同意する場合、遺伝カウンセリング後に採血

・検査後遺伝カウンセリング2週間後 結果説明 (パートナーと一緒に来院)

・検査結果が陽性だった場合には羊水検査を実施(別日に予約)

参照:国立研究開発法人 国立循環器病研究センター NIPT(無侵襲的出生前遺伝学的検査)の実施について

医療機関によって細かい流れは異なりますが、検査前の遺伝カウンセリングやフォロー体制などの基準が定められており、妊婦さんの不安や悩みに寄り添った支援が受けられるでしょう。

NIPT無認可(認可外)施設でのNIPTの流れ

NIPT無認可(認可外)施設においても、認可施設と同様に検査前後の遺伝カウンセリングを実施し、丁寧な説明やNIPTで陽性が出た場合の羊水検査の補助制度や羊水検査の実施、羊水検査が行える病院の紹介などに対応しているところもあります。

一方で、NIPT検査(採血)のときだけ受診し、郵送やオンラインでの結果報告を行うところも少なくありません。

対面の診察(遺伝カウンセリング)が少ないため、不安感をもつ方もいますが、電話での不安や悩みの相談窓口設置など、遠方の方や忙しい方でも負担が少ないメリットもあります。

NIPTを受ける病院の選び方

NIPTを受けるかどうか、どの病院で受けるかなど、さまざまな選択肢があり、悩む方も多いかと思います。

NIPTを受ける病院選び方のポイントは以下の3つです。

・NIPTの検査内容

・NIPTの費用

・医療機関の実績と信用性

一つ一つ詳しく説明していきます。

NIPTの検査内容

NIPT認定施設では13・18・21トリソミーのみの検査を行います。

一方で、無認定施設(認可外)では3つのトリソミー以外の染色体異常症や遺伝子異常性(微小欠失症)、性別検査ができるケースもあります。

ご自身が、どのような検査を受けたいのか、検査項目を確認しましょう。

NIPTの費用

NIPTは保険適応外なので、自費診療となり、実施する医療機関によって費用が異なりますが、おおよそ8万円~20万円未満です。

NIPT認定施設よりも無認定施設(認可外)の方が費用を抑えられる場合もありますが、他の検査や追加の確定検査が必要な場合は追加の費用がかかる場合もあります。

検査項目とともにそれぞれにかかる検査費用について、最初の診察から検査、カウンセリング、追加の確定検査、他の医療機関への紹介料、再検査費用など総額の費用をしっかりチェックして選びましょう。

参照:こども家庭庁 NIPT受検者調査出生前検査に対する支援体制構築のための研究(R4年度)P.8

医療機関の実績と信用性

NIPT認定施設では医師やカウンセリングなどの要件が定められており、多くの無認定施設(認可外)でもNIPT認定施設と同じように医師により適切に医療行為が行われています。

しかし、中には知識や経験が浅い医師が検査やカウンセリングを行うケースや検査後の説明が不十分である施設があるのも現状です。

NIPT検査を検討する場合は、以下のポイントが重要です。

・検査実績

・カウンセリング体制

・NIPTに関する知識と経験豊富な医師(婦人科専門医)やスタッフが在籍

・NIPT後のアフターフォロー

・口コミや評判

これらを確認して信頼のおける医療機関を選ぶようにしましょう。

NIPTに不安…相談し穏やかな気持ちで出産を

NIPTについて、NIPTの特徴や対象者、NIPTを受けられる施設、病院選びのポイントなどを詳しく解説しました。

NIPTを受けることで、安心を得られることもありますが、確定診断ではないため、不安を感じる方もいらっしゃるかもしれません。

NIPTを受けられる方は、おなかの赤ちゃんの健康を守り、安心して出産を迎えられるように、どのような検査なのか理解を深め、夫婦でよく話し合うことが大切です。

不安を感じる方は、医師やカウンセラーに相談しながら、穏やかな気持ちで出産までの日々を過ごし、納得のいく選択をしましょう。

-NIPT