NIPT

出生前診断は受けるべきか?受検者の割合や後悔しないためのポイント

おなかの赤ちゃんの状態を知る出生前診断は、妊婦さんにとって大きな決断ですので、受けるべきか悩んでいる方も多いのではないでしょうか。

検査を受けて「赤ちゃんの病気を早く知ることができて良かった」「治療の計画や心の準備ができた」と感じる方もいらっしゃれば、思いがけない結果に後悔される方もいらっしゃいます。

出生前診断は任意の検査なので、受けるか受けないかは妊婦さん自身やパートナーとよく相談して選択することが大切です。

しかし、高齢出産の方や過去に染色体異数性を持つ赤ちゃんを妊娠・分娩したことがある方などは医師から勧められた方もいらっしゃるかもしれません。

この記事では、出生前診断の種類や出生前診断を受けた方の割合、実際に受けた方の声、後悔しないためのポイントを詳しく解説します。

出生前診断を受けるべきか悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。

出生前診断の種類

出生前診断は、妊娠中のおなかの赤ちゃんの発育状態や疾患等の有無などの可能性を調べることができ、大きく非確定的検査と確定的検査に分けられます。

非確定的検査

妊婦さんや赤ちゃんへの身体的なリスクは低いですが、疾患の可能性を示すスクリーニング検査なので、診断の確定はできません。

確定する場合は、確定的検査を行う必要があります。

確定的検査

赤ちゃんの疾患や異常の有無などの診断を確定する検査です。

非確定的検査の結果で陽性と出た場合などに追加で検査する場合があります。 妊婦さんの負担が大きく、流産のリスクが伴います。

非確定的検査と確定的検査は、主に以下の種類があります。

非確定的検査の種類

・超音波ソフトマーカー検査

・母体血清マーカー検査(クアトロ検査)

・NIPT(新型出生前検査)

確定的検査

・絨毛検査

・羊水検査

一つ一つ詳しく説明していきます。

超音波ソフトマーカー検査

超音波ソフトマーカー検査は、妊娠11~13週目に行われる超音波検査です。

母体のおなかや場合によっては膣から超音波を発信する機械(プローブ)を当てて行う通常の妊婦検診で行われる超音波検査の一部や追加して行うことがあります。

赤ちゃんの様子を画像で確認するほか、染色体異常を持つ赤ちゃんに見られることが多い、首の後ろのむくみ(NT)やその他の身体的な特徴を詳しく観察します。

13トリソミー症候群(パトウ症候群)・18トリソミー症候群(エドワーズ症候群)・ダウン症候群(21トリソミー)の3つの疾患が対象です。 流産のリスクはありません。

参照:厚生労働省 NIPT 等の出生前検査に関する専門委員会報告書 P.2・P.3

参照:出生前検査認証制度等運営委員会

母体血清マーカー検査(クアトロ検査)

母体血清マーカー検査(クアトロ検査)は、妊娠15~20週に妊婦さんの血液を採取して行います。

ダウン症 (21トリソミー)、18トリソミー、開放性神経管奇形の3つについて可能性を評価します。

流産のリスクはありません。

参照:厚生労働省 NIPT 等の出生前検査に関する専門委員会報告書 P.2・P.3

参照:出生前検査認証制度等運営委員会

NIPT(新型出生前検査)

NIPT(新型出生前検査)は、妊娠初期の9~10週頃以降から妊婦さんの血液を採取して行います。

血漿中にある胎児由来のDNAの断片を分析して、おなかの赤ちゃんの染色体の数的異常をスクリーニングする遺伝学的検査です。

13トリソミー症候群(パトウ症候群)・18トリソミー症候群(エドワーズ症候群)・ダウン症候群(21トリソミー)の3つの疾患のリスクを評価します。

流産のリスクはありません。

参照:厚生労働省 NIPT 等の出生前検査に関する専門委員会報告書 P.2・P.3

参照:出生前検査認証制度等運営委員会

絨毛検査

絨毛検査は、妊娠 11~14 週におなかに針を刺して(子宮内穿刺)絨毛組織を採取し、赤ちゃんの染色体数的異常や構造異常、遺伝子異常などを検査する確定的検査です。

穿刺により、およそ1/100の確率で流産のリスクを伴います。

参照:厚生労働省 NIPT 等の出生前検査に関する専門委員会報告書 P.2・P.3

参照:出生前検査認証制度等運営委員会

羊水検査

羊水検査は、妊娠15~16週以降におなかに針を刺して(子宮内穿刺)羊水を採取し、赤ちゃんの染色体数的異常や構造異常、遺伝子異常、子宮内感染などを検査する確定的検査です。

穿刺により、およそ 1/300~1/500の確率で流産のリスクを伴います。

参照:厚生労働省 NIPT 等の出生前検査に関する専門委員会報告書 P.2・P.3

参照:出生前検査認証制度等運営委員会

晩婚化・晩産化で出生前診断を受ける割合は増加

近年、日本では高齢出産の割合が年々増加傾向にあります。

厚生労働省の人口動態統計の2023年の母親の出産時年齢別に見てみると、30~34歳が最も多く、全体の36.5%を占めています。

一般的に、35歳以上での出産を高齢出産と呼びますが、女性の社会進出や晩婚化、負認知症の進歩などが高齢出産増加の背景にあります。

高齢出産には、妊娠合併症や早産などのリスクが伴うとされていますが、中には染色体異常のリスクも含まれています。

参照:厚生労働省 令和5年(2023)人口動態統計(確定数)の概況

高齢出産の不安が出生前診断を受ける選択に

厚生労働省の「第2回NIPT等の出生前検査に関する専門委員会」の資料となった「出生前診断のニーズに関するアンケート」では、出産体験者の女性、妊婦さんへ出生前診断についてアンケートが実施されました。

アンケートの結果をもとにみていきましょう。

高齢出産、不安の背景

アンケートの中の「高年出産の不安」を見ると、おなかの赤ちゃんの染色体異常についての不安が最も高く、次いで妊娠中の異常という結果になっています。

赤ちゃんの病気の中には、高齢出産とは関係がないものが多くあります。しかし、13トリソミー症候群(パトウ症候群)・18トリソミー症候群(エドワーズ症候群)・ダウン症候群(21トリソミー)の3つの疾患については、妊婦さんの年齢が上がることで発生のリスクが高くなるとされています。

例えば、ダウン症の場合、出産時年齢が20歳で1/1441、35歳で1/338、40歳で1/84の発生率です。

晩婚化による出産年齢の上昇や不妊治療の推進などから、高齢出産をする女性が増えていますが、ダウン症などの染色体異常への不安も大きくなっている傾向です。

受検した出生前診断の種類

また、出産時35歳未満286名、35~39歳118名、40歳以上44歳 計448名に対して、どんな出生前検査を受けたかというアンケートも実施され、結果は以下のとおりです。

胎児超音波に次いでNIPTを受検する方の割合が高く、35歳未満(2.4%)、35~39歳(10.2%)、40歳以上(22.7%)となっています。

高齢出産になるほど、NIPTや羊水検査といった精密な検査を受ける割合が高くなる傾向があります。

特にNIPTは、血液検査のみで受検でき、妊婦さんとおなかの赤ちゃんへのリスクが少ないといったメリットから選ばれていると予測されます。

一方、出生前検査を何も受けていない人の割合は35歳未満(82.9%)、35~39歳(65.3%)、40歳以上(40.9%)となっています。

ご自身の選択で出生前診断を受けていない方もいます。

出生前診断、産科医からの情報提供が鍵

出生前診断に関する情報提供の有無と受検者の割合が以下のグラフです。

以下のように産科医から出生前診断における情報提供が得られなかったという方も少なくありません。

上記グラフからNIPTを受けた方で、かかりつけ医から話をあった方は20%、話がなかった方は5.1%となっています。

産科医からの情報提供は、妊婦が適切な出生前診断を選択するうえで重要な役割を果たしますが、NIPTは自費診療となるため情報提供が十分でないケースも少なくありません。

NIPTの情報提供体制は医療機関によって異なり、地域差も大きいため、受検を希望する妊婦さんがスムーズにアクセスできるわけではないと考えられます。

高齢出産で胎児の染色体異常などリスクへの不安を感じているものの、どんな検査があるのかよく分からない、産婦人科医からの情報提供が十分でないといった不安の解消が課題としてあげられます。

出生前診断を受けるべきか悩む妊婦さんが、正しい情報にアクセスでき、相談できる場所、そしておなかの赤ちゃんの染色体異常の早期発見・早期治療につなげられるようなサポートが求められています。

ただし、高齢出産だからといって出生前検査は義務ではないので、ご自身の状況や希望を検討し選択することが大切です。

参照:厚生労働省 NIPT等の出生前検査に関する専門委員会 女性から見た出生前検査

出生前診断を実際に受けた方・受けていない方の声

出生前診断を受けるべきか悩んでいる方は、「他の妊婦さんはどんな選択をしたのかな」と気になりますよね。

そこで、他の妊婦さんの実際の声を知ることで、自身の方向性がみえてきたり、妊婦さんの声に共感することもあるでしょう。

ここでは、出生前検査認証制度等運営委員会※の公式ホームページに掲載されている「検査を受けた人の声 受けていない人の声」から、まとめて紹介します。

出生前診断を受けるか、受けないかを迷っている方の判断材料として、ぜひ参考にしてください。

※出生前検査認証制度等運営委員会

出生前診断の情報提供を行う機関に「出生前検査認証制度等運営委員会」があります。

この機関は、厚生労働省の専門委員会「NIPT等の出生前検査に関する専門委員会」の報告書に基づき、日本医学会の中に設立され活動している機関です。

出生前検査認証制度等運営委員会では、妊婦さんやパートナーが、出生前診断について正しく理解し、適切な選択ができるよう以下の活動を行っています。

・出生前診断に関するさまざまな情報提供

・NIPT認証医療機関(基幹施設・連携施設)の認証

参照:出生前検査認証制度等運営委員会

出生前診断を受けた方の声

・出生前診断を受けることで事前に障がいへの知識を知り、準備ができると、前向きな気持ちで検査した。

・初期健診で指摘され、超音波検査と羊水検査を受け診断が確定。妊娠の継続を希望し、多くの方のサポートを受けて無事出産できた。

・前回の出産時、子供が染色体の異常で死産してしまった。出生前診断で異常がないことが分かり、安心して出産に臨めた。

出生前診断を受けなかった方の声

・おなかの赤ちゃんに病気がわかったとき産むのか産まないのか悩み、後悔するかもしれないと思い受けなかった。しかし、胎児のうちから治療できるのであればいいと思う。

・高額で受けづらかった。

・妊娠初期は受検しようと思っていたが、不安な気持ちを整理したり先生に相談したりして受けないことを決めた。

・ダウン症の子供を育てているが、受けていたら妊娠の継続を諦めていたかもしれないと思うと受けなくてよかったと思う。

ポジティブな声としては、出生前診断をすることで事前におなかの赤ちゃんの状態を知ることでき、準備や心構えができる安心感があげられます。

特に、過去の妊娠で辛い経験をした方にとっては、安心して出産に臨むための検査となっています。

一方、ネガティブな声としては、検査に対する不安やおなかの赤ちゃんに異常が見つかった場合に中絶を選択する可能性があることへの葛藤などがあげられます。

出生前診断で後悔しないためのポイント

出生前診断は、おなかの赤ちゃんの状態を知るための検査ですが、検査を後悔された方も少なくありません。

後悔しないためには、出生前診断を受けた後のことや心構えが必要です。

ここでは、出生前診断で後悔しないための4つのポイントについて説明します。

メリット・デメリットを含め情報収集を十分に行う

妊婦健診で通院している医師と相談し、出生前診断が必要なのか・どの方法が適しているのかなどを相談しましょう。

また、出生前診断にはさまざまな種類があり、それぞれの検査の特徴、精度、リスクなどが異なります。

メリット・デメリットを十分に理解し、できるかぎり情報を集め、正しい知識を持つことが大切です。

夫婦で一緒に考える

出生前診断を受けるかどうか、受ける場合はどの検査を受けるか、検査結果が出た場合にどのような対応をするかなど、ご自身だけでなくパートナーや家族とよく話し合いましょう。

出生前診断はデリケートな検査なので、夫婦間であっても意見が異なることもあります。

それぞれの考えや気持ちを尊重しましょう。

一人で悩まず専門家へ相談

出生前診断を受けるべきか悩んでいる方や後悔したくないという方は、産婦人科医や遺伝カウンセラーなどの相談窓口を活用し、検査に関する悩みや不安を解消し、十分な情報を得た上で判断することをおすすめします。

検査のメリット、デメリットやそれぞれのリスク、出産後の生活など、さまざまな視点からアドバイスをもらうことができます。

出生前診断を受けるかどうか悩んでいる方は、相談窓口を活用し、十分な情報を得た上で判断することをおすすめします。

出生前診断について相談できるところは、以下のとおりです。

・妊婦健診で通院している産婦人科医療機関の医師や助産師

・自治体の相談支援センターや母子保健窓口

・遺伝カウンセリング

・NIPT認証施設

・ピアサポートなど

参照:出生前検査認証制度等運営委員会 出生前検査について相談できるところ

出生前診断ができる時期は限られている

「おなかの赤ちゃんに、障がいがなく健康で生まれてきてほしい」と願うのは、親として自然な感情です。

そのため、出生前診断で赤ちゃんに疾患が見つかった場合、妊娠を継続するのか諦めるのか、命の選択をしなければならず心理的な負担は大きなものです。

しかし、母体保護法の第2条第2項により「胎児が、母体外において、生命を保続することのできない時期」の基準は、妊娠22週未満と定められています。

これは、人工妊娠中絶を受けられる時期ということです。

出生前診断ができる時期にも基準があり、妊娠継続の選択をする時期が限られています。

例えば、NIPTは、妊娠初期の9~10週頃以降、羊水検査は妊娠15週以降とされ、この時期から妊娠22週未満までに決断する必要があります。

妊娠が分かってから検査を受けるまでの時間はあまりありません。

デリケートな問題ですが、妊娠初期の段階で出生前診断について出生前診断について理解を深め、パートナーと心の準備をしておくことが大切です。

参照:厚生労働省 母体保護法

参照:厚生労働省 「母体保護法の施行について」の一部改正について(通知)

【まとめ】出生前診断、迷うのは当然。あなたらしい選択を

出生前診断の種類や出生前診断を受けた方の割合、実際に受けた方の声、後悔しないためのポイントを解説しました。

妊娠初期の喜びで溢れる時期に出生前診断や妊娠継続について話し合うのは、ネガティブなことだと受け止め、気が進まない方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、おなかの赤ちゃんの健康や出産後の生活のことを考えると、事前に出生前診断の知識を持ち、夫婦でしっかり話し合っておくことが大切です。

出生前診断を受けるべきかどうかは、妊婦さんやパートナーの考え方や状況によって異なります。

どんな選択をしても正解があるわけではなく、おなかの赤ちゃんを愛する気持ちは変わりません。

一人で悩まず、夫婦や家族と一緒に考え、後悔のない選択をしましょう。

-NIPT