
近年注目されている出生前診断のNIPT(新型出生診断)は、妊婦さんの血液を採取しておなかの赤ちゃんの染色体異常を調べる検査です。
「NIPT検査を受けたいけど、費用が気になる…」と、検査を受けたいけれど費用について悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
そこでこの記事では、NIPT検査の費用について相場や内訳、受検する際の注意点などを詳しく解説します。
NIPT検査の費用について詳しく知りたい方は、ぜひ参考にしてください。
NIPT検査とは?
NIPTは、2010年にアメリカで開発された新しい出生前検査で、非侵襲性出生前遺伝学的検査、母体血を用いた出生前遺伝学的検査ともいわれます。
日本では、2013年から日本医学会の認証を受けた認定施設や認証を受けていない無認可施設等で検査が実施されています。
従来から実施されている出生前診断では、妊婦さんのおなかに針を刺す(子宮穿刺)などにより流産や破水等のリスクがありました。
しかし、NIPTは妊娠9~10週頃以降の妊婦さんの血液を採取しておなかの赤ちゃんの染色体異常を調べる検査です。
採血のリスクはありますが流産などのリスクはなく、身体への負担が低い検査とされています。
NIPTは、13トリソミー症候群(パトウ症候群)・18トリソミー症候群(エドワーズ症候群)・ダウン症候群(21トリソミー)の3つの疾患のリスクの可能性を評価するスクリーニング検査で、確定的検査ではありません。
ダウン症候群の感度は99.1%とされていますが、診断を確定するには絨毛検査や羊水検査等の確定的検査が必要です。
参照:出生前検査認証制度等運営委員 NIPT(非侵襲性出生前遺伝学的検査)
参照:厚生労働省 第2回 NIPT等の出生前検査に関する専門委員会 資料 P.23
NIPT検査の費用の相場は?
NIPT検査の費用は、50,000~200,000円と幅があり、医療施設によってさまざまです。
羊水検査等に比べて料金の幅があるのは、認定施設と無認可(認可外)施設があるためだと考えられます。
認定施設ではNIPT検査では、主に以下の染色体異常を調べます。
- 13トリソミー症候群(パトウ症候群)
- 18トリソミー症候群(エドワーズ症候群)
- ダウン症候群(21トリソミー)
これら3つの疾患の可能性を調べますが、無認可施設では認可施設よりも幅広い検査が実施されています。
参照:出生前検査認証制度等運営委員 NIPT(非侵襲性出生前遺伝学的検査)
参照:厚生労働省 第2回 NIPT等の出生前検査に関する専門委員会 資料 P.23
NIPT等の出生前診断の費用、補助金制度はある?
NIPTには、現在、国や自治体からの補助金制度はありません。さらに、保険適用外であり、医療費控除や高額療養費制度等、公的制度の対象になりません。
以下で詳しく説明します。
NIPTの費用は保険適用にならない
NIPT検査含め、出生前診断は公的健康保険が適用されません。
NIPT検査にかかる遺伝カウンセリング費用や追加の検査費用は全て自己負担です。
NIPTは医療費控除の対象にならない
NIPTは、医療費控除の対象にもならないため、経済的な負担が大きい検査です。
国税庁のホームページには、NIPTは医療費控除の対象になるの?というQ&Aが示されています。
国税庁によると、見解は以下のとおりです。
医療費控除は病気の治療を伴うものが対象となる。
しかし、NIPTはおなかの赤ちゃんの染色体の異常を確認するための検査となり、治療につながるものではないため医療費控除の対象にならない。
NIPTを受けるか受けないかは、妊婦さんの任意であることも医療費控除の対象とならない理由のひとつです。
NIPTは高額療養費制度の対象にならない
高額療養費は、1ヵ月にかかった医療費の自己負担額が一定の金額(自己負担限度額)を超えた場合、限度額を超えた分が後で払い戻される制度のことです。
NIPTや羊水検査等は高額な検査なので限度額を超えることが予測されますが、高額療養費は、公的健康保険適用の治療が対象となります。
そのため、出生前診断は保険適用外となり、高額療養費制度の対象外です。
出生前診断は民間の保険でカバーできる?
民間の保険も健康保険と同様に、病気に関連した検査ではない場合、保障の対象にならない可能性が高いとされています。
しかし、保険会社によっては、羊水検査等に伴い入院する場合、生命保険(医療保険)がおりるケースがあります。
入っている生命保険によって対応が異なるため、ご自身が加入している保険会社に確認しましょう。
NIPT検査にかかる料金の内訳は?
NIPT検査にかかる遺伝カウンセリング費用や検査費用は全て自己負担になると先述しましたが、「結局いくらかかるの?」と気になりますよね。
NIPTの検査に含まれている内容は以下のとおりです。
- 遺伝カウンセリングの費用
- 医師や看護師が検査のために採血をする費用
- 採血した血液(検体)を郵送する費用
- データ解析の費用
- 結果通知における費用(対面・郵送・オンライン等)
医療機関によっては、上記以外に以下のような費用がかかる場合があります。
- 再検査の費用
- アフターフォローの費用(陽性後のサポートや医療機関紹介等)
- 絨毛検査や羊水検査など確定的検査の費用
※NIPTを受検した病院で確定的検査を行う場合は、費用がかからない場合もあります
医療機関によってカバーされる範囲や料金体系はさまざまです。無認可施設では、検査項目によってコースが設定されているところもあります。
NIPTを受検する方は、事前に「何にいくらかかるか」ということを確認することが大切です。
NIPTの費用は安い?高い?みんなの料金をチェック!
こども家庭庁の「NIPT受検者調査出生前検査に対する支援体制構築のための研究」によると、NIPT(新型出生前検査)の受検費用に関する調査結果は以下のとおりです。

NIPTの受検費用は5万円未満から26万円以上まで幅広く、最も多い価格帯は11万円~14万円未満(22%)で、次いで8万円~11万円未満(21%)です。
グラフからは正確な平均費用は読み取れませんが、8万円~14万円未満の価格帯が多い傾向です。
認証(認定)施設では、14万円未満が62.6%を占めており、比較的安価に検査を実施している医療機関が多いことがわかります。
一方、非認証(無認可)施設では、14万円未満が47.8%であり、20万円以上の割合も28.4%と高いと示されています。
認証(認定)施設よりも非認証(無認可)施設の方が費用を抑えられる場合もありますが、他の検査や追加の確定検査が必要な場合は追加の費用がかかり、高額になる場合があります。
NIPTは保険適用外のため、検査費用が医療機関、施設によって大きく異なりますので、費用面だけでなく、検査内容や実績、評判なども確認して選ぶことが大切です。
参照:こども家庭庁 NIPT受検者調査出生前検査に対する支援体制構築のための研究(R4年度)
認可施設・無認可施設で料金は違う?
NIPT認定施設、無認可施設それぞれの検査費用の内訳をみていきましょう。
認定施設のNIPT検査費用(内訳)
認定施設を5件ピックアップして、NIPT検査の費用内訳を調べてみました。
熊本大学病院(基幹施設)
NIPT検査費用
102,000円
遺伝カウンセリング
初回:11,000円・2回目以降:5,500円
初診料5,500円(紹介状がない場合)・超音波断層法検査(1回あたり)5,300円
参照:熊本大学病院
日本赤十字社医療センター(基幹施設)
NIPT検査費用
100,000円
遺伝カウンセリング
30分10,000円(非課税)
参照:日本赤十字社医療センター
医療法人愛和会愛和病院(基幹施設)
NIPT検査費用
143,000円(税込)
遺伝カウンセリング
8,800円(税込)
参照:医療法人愛和会愛和病院
東京マザーズクリニック(連携施設)
NIPT検査費用
125,000円
遺伝カウンセリング
10,000円
参照:東京マザーズクリニック
りんくう総合医療センター(連携施設)
NIPT検査費用
121,000円
遺伝カウンセリング
院内出産予定の方3,300円・多淫出産予定の方5,500円
参照:りんくう総合医療センター
NIPTを受検する医療機関で分娩しない場合や検査会社の変更等により金額が変わる場合があります。
また、NIPT前後の遺伝カウンセリング、NIPT検査それぞれに費用がかかるため、「総額でいくら必要なのか」ということを事前に確認することをおすすめします。
無認可施設のNIPT検査費用(内訳)
次に無認定施設のNIPT検査の費用内訳をみていきましょう。
NIPT Japan
NIPT検査費用
A:165,000円(税込)・B:176,000円(税込)・C:198,000円(税込)
※検査項目や内容によって費用が異なります。
※羊水検査・絨毛検査の検査費用のサポートあり
相談体制
リモートでの遺伝カウンセリング30分10,000円
参照:NIPT Japan
DNA先端医療株式会社
NIPT検査費用
A:198,000円(税込)・B:231,000円(税込)・C:253,000円(税込)
※検査項目や内容によって費用が異なります。
※羊水検査・絨毛検査の検査費用のサポートあり
相談体制
検査結果後の無料の電話相談窓口あり
参照:DNA先端医療株式会社
ヒロクリニック
NIPT検査費用
ベーシックプラン:64,680円(税込)~230,780円(税込)・プレミアムプラン:98,780円(税込)~472,780円(税込)
※検査項目や内容によって費用が異なります。
※超音波検査や遠隔診療、検査結果郵送などのオプションや羊水検査の検査費用のサポートあり
相談体制
産婦人科専門医へ相談可能
参照:ヒロクリニック
ミネルバクリニック
NIPT検査費用
ライト:176,000(税込)・スタンダード:198,000(税込)・プレミアム:275,000(税込)
※検査項目や内容によって費用が異なります。
※羊水検査の検査費用のサポートあり
※男性用検査や胎児劣性疾患の検査等のオプションあり
相談体制
遺伝カウンセリング無料
参照:ミネルバクリニック
プレママクリニック
NIPT検査費用
フル:138,000円(税込)・ライト:55,000円(税込)
※羊水検査の検査費用のサポートあり
※検査結果郵送のオプションあり
相談体制
対面・オンライン診察(20分4,400円)
参照:プレママクリニック
NIPT検査費用の注意点、費用面での不安を解消するには?
NIPT検査を受ける際には、以下の点に注意しましょう。
検査前に費用についてしっかり確認する
NIPT実施医療機関であってもそれぞれの医療機関によって料金が異なります。
NIPTで陽性が出た場合に行う羊水検査の費用や追加で遺伝カウンセリングを受ける場合の費用など、最初に予定していた料金よりも高くなる可能性もあります。
検査費用の内訳や追加費用、サポート体制、支払い方法などを確認し、病院を選ぶようにしましょう。
検査項目を絞る
検査項目が多くなるほど費用が高くなるため、費用を抑えるには、検査項目を絞って検査するのがおすすめです。
認可施設では3つのトリソミー、無認可施設では幅広い検査ができますが、本当に必要な検査なのか、何を知りたいのかなど、医師や遺伝カウンセラーとともに検査の目的を明確にすることが大切です。
支払い方法を確認する
NIPTの支払いは、現金やクレジットカード(一括払い・分割払い)、デビットカード、銀行振り込みなど、施設によってさまざまです。
ご自身によって負担の少ない支払方法を選びましょう。
また、キャンセル料が発生する場合もありますので、その際の料金も確認しておくことが大切です。
検査費用だけでなく、検査内容や信頼性も考慮する
NIPT検査で調べられる項目は、認定施設では3つのトリソミーです。
一方、無認可施設では3つのトリソミー以外にも幅広い染色体異常などの検査が可能です。
多くの検査を受けたい場合は無認可施設を選ばれる方もいらっしゃいますが、遺伝カウンセリングの有無や陽性後のフォロー体制、検査管理体制、実績、評判等の信頼性も総合的に考慮しましょう。
【まとめ】NIPTを受けるかどうか、費用面だけでなくトータルで考えよう
NIPT検査の費用について相場や内訳、受検する際の注意点などを詳しく解説しました。
NIPT検査は、おなかの赤ちゃんの染色体異常を調べる検査ですが、費用が高額であるため、検査を受けるかどうか悩んでいる方も多いかと思います。
NIPT検査の費用は、医療機関によって大きく異なりますが、ご紹介したグラフをみると8万円~14万円程度が相場です。
検査費用だけでなく、遺伝カウンセリング費用や超音波検査や羊水検査等の追加で行う検査の費用も考慮する必要があります。
さらに、無認可施設では高額にはなりますが、3つのトリソミー以外の染色体異常や性別等の検査も実施されています。
NIPT検査を受けるかどうかは、ご夫婦でよく話し合い、検査の目的や費用、注意点などを理解した上で決断することが大切です。